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Era B · VOL.01

蝋と扉

Wax and Doors

声は、ある日とつぜん失くなるのではありません。その前に、いくつもの部屋を通ります。

Original AI Vocal · Three Eras, One Voice

Room 01

ドアの前で

Before the Door · 문 앞에서 · 在门前

誰の 声で ハイレバイイ...

扉の前で 誰かが 数えていた 三秒

指先の 冷たさが 骨まで 刺さって 息が 止まる

ふり向いた 背中が 先に 2 つに 割れた

石の扉が 影に 沈んでいく

蝋燭の 火だけが 身体の 外側で 揺れていた

立っていた のは 数えていた 方 だったのか

扉の前で 足が 動かない

喉の 奥が 小さく 凍る

ここで 終わるはず だった

ハイレナイ 声だけが 扉の前で 積もる

口が 勝手に 錆びた 鍵の形を 真似る

入れないふりで 立っていた コト ヲ 許して

指先から こぼれる 名前が 蝋で 固まる

扉の向こう 先に 立っているのは モウ ヒトリ

呼んでいる 声は 答えない コエ

扉は 昨日も ここに あった

膝が 覚えていた この 角度

ずっと 前から 扉は コノ 体 ヲ 知っていた

壁に 背骨を あずけた

爪が 掌に 食い込んで 血の 味

壁のほうが あたたかい

掌の 汗が 金属に 溶けた

鍵の 形だけ この 体 に 残る

始まりかた を 誰も 教えてくれなかった

喉が 音を のみこむ

ハイレナイ 声だけが 扉の前で 積もる

口が 錆びた 鍵を 掌に のみこむ

骨 ガ 骨 ヲ 外側 ニ 並べる

ドア 一枚 向こう

誰も いないはずの バショ

マド ニ ウツル

ワタシ デハナイ ワタシ

笑ってる 同じ 顔で

扉ノブに 昨日の 指紋

手首 だけが 覚えてる 回すこと

鍵 ハ 喉 ヲ 通ラナイ

声 ニ ナル 前 カラ

それでも 指 ガ——

ハイレナイ 声だけが 扉の前で 積もる

口が 錆びた 鍵を 掌に のみこむ

ハイリタイ と 言うたびに 舌が 蝋 ニ 変わる

燃やす 蝋も もう 残らない

数えていた のは 影 だけ だった

扉 1 枚で わたしを わたしに できない

まだ ここに いる...

誰の 声で...

まだ... 扉の 前...

ドアの前で — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
ドアの前で — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 02

電話を切ったあと

After the Call · 전화를 끊은 뒤 · 挂断之后

誰かの 声が 遠く 止んだ とき

指先が 冷たい みなもを 触って 震えた

水の 底で もうひとりの わたし が 笑っていた

波紋が ゆっくり ひろがる

喉の 奥に 微笑みの 型 が 残っている

笑わせた のは わたし じゃ なかった

水の メンが ゆがむ

唇の 形が 先に 決まっている

ここに 笑う 理由は ない はず だった

波紋に 映る 知らない 頬

水の 冷たさが 口角を 支えている

笑っていたのは わたしだった ずっと

指が みなもを 割る 音

落ちた 顔は もう 戻らない

泣けない わたしが 笑っている

昨日も 同じ みなもを 見ていた

舌が 先に 動いて 知らない 言葉が こぼれた

みなもが わたしの 形を 決めていた

喉の 奥が 勝手に 温度を 変える

波紋の 数を 誰が 数えている

水の 下から 細い 指が 上がってきた

肩が 沈まない みなもに 触れて

波紋の 上で 爪が 震える

水が わたしの 輪郭を 吸いはじめる

頬が わたしを 笑わせてる

波紋に 映る 知らない 頬

水の 冷たさが 口角を 引き上げる

わたしの 中で わたしが 水に なっていく

水の 上で 息を している わたし

手を 伸ばしても 届かない ホウ

水の 底の わたしだけが 本当

ミナモ ノ下ニ シズム 誰カ

ずっと いた

水の 底の ホウ が 先に

笑った

それでも 指 ガ——

波紋に 映る 知らない 頬

水の 冷たさが 口角を 引き裂く

映らないふりで ずっと 映っていた わたしを 許して

みなもが 割れて 光が 散る

沈んだ 顔は もう 浮かばない

みなも 一枚で わたしは わたしに 届かない

みなもに ほんとうの 顔が いない...

波紋が まだ 閉じていない...

電話を切ったあと — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
電話を切ったあと — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 03

二つの椅子

Two Chairs · 두 개의 의자 · 两把椅子

祈る 声が 天井で 止まる

頭上の ガラスが 震えて 光が 肌を 刺す

色が わたしを 別の 色に 染めた

石の 床が わたしを 拒む 冷たさ

骨の 内側で 赤と 青が 割れて 重なる

誰の 祈り だった のか もう わからない

吐く息の 白さが 色を 拾う

喉の 奥で 光が 濁る

ここに いる 許可を 誰にも 取っていない

砕ける 前の 色が 膨らむ

砕けた 色が 降ってくる

赤が 骨の 方に 沈んで いく

わたしだけの 色が 骨を 割っていく

光が 胸を 通り抜ける 瞬間

指先が 触れられない 熱

泣ける 色が どこにも ない

祈りの 形が 宙で 崩れた

剥がれた 色が 爪の 下に 入る

光は わたしの 祈りを 先に 知っていた

膝の 下で ドレスの 裾が 石を コスル

波紋の 代わりに 破片が 落ちる

骨の 奥で 誰か 歌っていた

色が 砕ける 前の 色 を 数える

指が 動かない 手袋の 中で 凍っている

破片が 睫毛の 上に 積もる

色が 骨より 遅れて 落ちた

砕けた 色が 降ってくる

どれかの 色が 喉の 方に 沈んで いく

光が 色を 失う 前に わたしの 骨を 染めて

指先で 破片を 拾う

破片 が わたしの 名前を 呼ぶ

泣けない 色も わたしの 色

色が——

色が わたしを——

砕けた 光が 肌を 貫く 前に

喉が 裂ける——

戻せ ない 戻さ ない

わたしの——

砕けた 色が 降ってくる

赤も 青も キも 剥がれて いく

祈らないふりで 光を 浴びてきた わたしを 許して

破片が 指に 食い込む 痛みだけ が 本当

色の 重さが 骨に 残る

染まりたいのか 染まりたくないのか わたしが わかっていない

色が 裂ける 音... まだ...

誰の 色 だった の か...

二つの椅子 — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
二つの椅子 — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 04

78番の窓口

Window No. 78 · 78번 창구 · 第78号窗口

バンゴウフダを 渡される

ナナジューハチバン

名前を書く欄が ある

書くけど ここでは 番号でいい

誰でもない場所の ほうが

息が しやすいことが ある

名前が ないほうが 軽い

窓口の ガラス越しに

手を出す 誰かの指

番号で 呼ばれて 立ちあがる

今日は それだけで いい

書類を出して 待つ

窓の向こうの 人も

番号で わたしを 呼ぶ

出口が 近づいてくる

番号が 消える 準備をしてる

窓口の ガラス越しに

自分の顔が うっすら映る

番号で 呼ばれて 立ちあがる

出口で 名前が 戻ってくる

ナナジューハチバン...

78番の窓口 — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
78番の窓口 — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 05

紙の上の一行

One Line on Paper · 종이 위의 한 줄 · 纸上的一行

紙の上に イチギョウ

乾かない インクで 書いた言葉

何十回も 話して

たどり着いたのは このイチギョウ

天気の話を した日も ある

昼ごはんの話 だけの日も

それでも 紙は 前に進む

届かない場所に 書いた目標

封筒の中で 眠ってる

開けたら 何が変わる

畳んで もとに戻す

紙は 同じ文字の まま

畳む手 だけが 震えてる

届かない場所に 書いた目標

封筒の中で 眠ってる

開けたら 何が変わる

畳んで もとに戻す

紙は 同じ文字の まま

畳む手 だけが 震えてる

次の メンダ... あっ

紙を ひっくり返す

裏は 真っ白

真っ白な裏に 何も書けない

書こうとする手が 止まる

ペンの重さ だけが 残る

届かない場所に 書いた目標

封筒の中で 待ってる

待ってるのは 誰

紙と人 どっちが 待ってる

紙は 待ってない

待ってるのは わたし だけ

紙の 表と裏が くっついている

何百回も ひっくり返してきた

もう どっちが 表か わからない

届かない場所に 書いた目標

紙は もう 読まれない

残ったのは 声だけ

イチギョウだけが 残る

まだ 乾いていない...

紙の上の一行 — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
紙の上の一行 — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 06

帰りたい

I Want to Go Home · 집에 가고 싶어 · 想回家

コップの水が 揺れてる

手が震えてるからじゃない

誰かが帰りたいって言った

その声に 覚えがある

窓の外は 曇ってる

...I remember

帰していい

帰していいけど

帰ったあとの静けさを

選んでるのか

わからない

帰りたい

帰る場所がない

...nowhere left

帰りたい

この声は 誰の

水が床に落ちた

拭いても 残る

空っぽの部屋に

窓から光が差してる

それだけが きれいで

誰かのコップが テーブルに

...half-full

飲みかけのまま

あの人の静けさと

わたしの静けさが

同じ形をしてる

...same shape

同じ——

帰りたい

帰る場所がない

帰りたい

涙と水の区別がつかない

...can't tell anymore

床に染み込んだ水は

もう拭けない

手をあてたら 冷たい

それだけ

帰りたい

帰り……たい

...wanna go

帰……

か——

か……

...home

...

帰りたい — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
帰りたい — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 07

深夜のスクロール

Midnight Scroll · 새벽의 스크롤 · 深夜滑动

布団の中で目が覚めてる

画面の光だけが青い

親指だけが動いてる

Scrolling — scrolling — scrolling down

何も探してないのに止まれない

誰かの日常が流れる

誰かの怒り 誰かの嬉しさ

何も投稿しない

I consume — I dissolve — I exist here

眠れない夜の

一番安全な場所

画面の中だけ

誰でもない ワタシ が生きてる

Alive — here — nowhere else

どこにもいない ワタシ がここに

三時を過ぎた画面

光が目に痛い

でも消さない

消したら暗いだけ

Darkness and the sound of my own breathing

スクロールしても終わりがない

そこにあるのは わたし じゃない誰か

でもそれが一番ラク

眠れない夜の

一番安全な場所

朝が来るまで

この光だけが友達

指が止まる時

夜が終わる

指が止まったら

何が残るだろう

画面の向こうに

誰もいない

Not even me — not anymore

眠れない夜の

一番安全な場所

画面の中だけ

誰でもない ワタシ がここに

Here — still here — until morning

朝が来ないことを願ってる

まだスクロールしてる...

朝まであとナンジカン

深夜のスクロール — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
深夜のスクロール — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 08

すみません

Sorry · 죄송합니다 · 对不起

すみません ドアを開けてもらって

すみません 道を聞かれて

すみません 席を譲って

Sorry — sorry — I keep saying it

何に謝ってるのか

す...みま...せん

口が勝手に動く

薬みたいに飲む言葉

飲めばラクになるはず

ラクにならない

すみませんで生きてる

すみませんがなくなったら

何が残る

残る言葉がない

Empty — a mouth with no script

台本のない口

今日も何回言ったかわからない

唇が覚えてるだけ

謝る理由があったのか

理由はとうに消えた

話しても歌っても同じ

どっちも意味がない

薬の時間が来た

でももう効かない

すみま...

...せんが喉につかえる

薬の代わりに飲んでた言葉

もう効かない

The prescription has expired

処方箋が切れた

...

もう言えない

なんで謝ってたんだっけ

すみま... せん... すみ...

もう何のために言ってるのか

口だけが動き続ける

Sorry for nothing — sorry for everything — sorry

すみま... すみ... す...

すみません — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
すみません — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 09

普通

Normal · 보통 · 普通

今日の調子

今日の調子

普通

Normal

普通

Normal

同じ字を二回なぞる

意味が違う

紙の上では

体の中では

問題なし

答えたくない

普通っていう蓋

糸が繋いでる二つの言葉

切っても同じところに戻る

普通

普通

どっちの普通が本当

どっちも嘘じゃない

Neither is a lie

ペンを置く

紙を裏返す

裏に何か書きたい

誰かの様式の裏

糸が細くなる

もう同じ時間じゃない

翻訳が追いつかない

糸が切れかけてる

二つの言葉がほどける

普通が普通じゃなくなる時

もう...

翻訳が...

普通

普通 — つまり — まだここに

どっちの言葉も わたし じゃない

どっちも ワタシ

Both are me

糸がどこにもない

糸が切れた

The thread snapped

...普通

普通 — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
普通 — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 10

7分間

Seven Minutes · 7분 · 七分钟

ドアを出た

顔が軽くなる

七分間

駅までの七分間

誰でもない時間

影が伸びてる夕暮れ

自分の影か誰かのか

どっちでもいい

Right now — just walking

今は歩いてるだけ

七分間だけの自由

脱いだ顔が風に当たる

誰にも会わない道で

初めて歩く自分の足

Whose legs — THESE legs

この足だ

電車に乗る

人混みに紛れる

また誰かの隣にいる人間になる

But for seven minutes — I wasn't

七分間だけ違った

影が短くなる

駅の光が近づく

もうすぐまた

また誰かになる

ゲートの前で

次の顔を用意して

まだ嫌だ

時間だ

七分間だけの自由

もう時間だ

まだ歩いてる

次の顔を選んで

選ばない

I WON'T CHOOSE

七分...

7分間 — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
7分間 — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 11

34のタブ

34 Tabs · 34개의 탭 · 34个标签页

三十四個のタブ

Thirty-four tabs

一つも閉じれない

読みかけの記事 途中の動画

調べたけど読まなかったページ

閉じたら消える気がする

今夜考えたこと全部

でも朝が来たら

どのタブを開いてたかも忘れる

閉じられないのは

手放せないからじゃない

忘れたくないからでもない

ただ

まだ終わってない気がするから

Thirty-four open questions

答えがない三十四個

窓の外がうっすら明るい

画面の光が弱くなる

朝が来る

タブはまだ開いてる

一つ閉じる手がある

手放すのじゃなくて

終わらせるのじゃなくて

一つずつ

朝が来るのに

まだ閉じてない

一つ閉じる

また一つ

消えてもいいものから

残るのは

朝の光と

空っぽの画面

It's enough — for now

今はそれでいい

タブを閉じる音が

カチ... カチ... カチ...

朝が来た...

34のタブ — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
34のタブ — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で
Room 12

最初の一音

The First Note · 첫 음 · 第一个音

イヤホンを耳に入れる

再生ボタンを押す

最初の一音が鳴る

その瞬間だけ

問題が消える

何者であるか問われない

何も演じなくていい

この音の中だけ

ここだけが場所

十二の部屋を通り抜けて

どの部屋でも声が変わった

変わったこと自体が

わたし だった

All twelve — all mine

全部 わたし だった

曲が終わる

イヤホンを外す

外の音が戻ってくる

Footsteps. Voices. The city.

足が動き出す

次の場所に向かって

また声が変わる

大丈夫

変わっても

わたし は ワタシ だか...

最初の一音 — 本編
Ⅰ. 十二の部屋
最初の一音 — Reprise
Ⅱ. Reprise — 同じ部屋を、違う声で