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Era C · VOL.01

雪と定刻

Snow and On Time

同じ朝に、今度は選んで立っている。

Original AI Vocal · Three Eras, One Voice

第一幕 Room 01 — 03
Room 01

定刻

On Time · 정시 · 准点

足が先に降りている

改札の音より前に

体が覚えたぶんだけ

今日が短くなる

同じ位置に立っている

線の内側の 少し手前

足跡の濃いところ

誰かが積み重ねた

アナウンスが二回鳴って

一回目を聞いていない

聞かなくても わかる

わかることが 増えていく

定刻に なっている

私が決めたのではなく

定刻の ほうが来る

そこに 立っている

定刻に なっている

遅れたことが ない

遅れない ということを

誰にも 話していない

白い息が 前に出る

出たぶんだけ 消える

雪の 踏み跡に

似ていることに まだ

気づいていない

気づかなくても 電車は来る

七両目の 同じ扉

並ぶ順番も 同じ

選んだ 記憶がない

選ばなかった 記憶も ない

どちらも 無いまま

足が 先に降りている

定刻に なっている

私が決めたのではなく

定刻の ほうが来る

そこに 立っている

定刻に なっている

遅れたことが ない

遅れない ということが

私の かたちになる

一本だけ 静かに入る

音が 足りない

足りないまま 扉が開く

誰も 気づかない

定刻に なっている

私が決めたのではなく

定刻の ほうが来る

そこに 立っている

立って いる

次の 定刻

定刻 — 本編
定刻 — Reprise

第一幕定刻

Room 02

手が先に覚える

My Hands Remember First · 손이 먼저 기억해 · 手先记住

指が 先に 押している

画面より 少し 前に

覚えた 順番の ほうが

私を 運んでいく

紙の 端を 揃える 手

揃えた ことは 知らない

机の 木目が

同じ 場所だけ 薄い

インクの 減りかた だけが

今日の 長さを 書いている

読み返す ひとは いない

減る ことだけ 続いていく

手が 先に 覚えた

私は どこに いたのだろう

手順の ほうが 私を

知っている

手が 先に 覚えた

間違えた ことが ない

間違えない ということを

誰も 見ていない

白い 指の 腹に

細い 線が 残る

雪の 上の

枝の 影に 似ていると まだ

気づいていない

気づかなくても 手は 動く

三つ目の 引き出し

開ける 角度も 同じ

覚えた 日を 覚えていない

覚えなかった 日も 知らない

どちらも 無いまま

指が 先に 押している

手が 先に 覚えた

私は どこに いたのだろう

手順の ほうが 私を

知っている

手が 先に 覚えた

間違えた ことが ない

間違えない ということが

私の 手に なる

一度だけ 線が 出ない

ペン先が 紙の 上で

何も 書かずに 戻る

誰も 気づかない

手が 先に 覚えた

私は どこに いたのだろう

手順の ほうが 私を

知っている

知って いる

次の 一行

手が先に覚える — 本編
手が先に覚える — Reprise

第一幕手が先に覚える

Room 03

同じ速さで

At the Same Pace · 같은 속도로 · 以同样的速度

足音が 揃っている

誰と 揃えたのか 知らない

右の 靴と 左の 靴が

私より 先に 決めている

通路の 床が 冷たい

同じ 角で 曲がる 肩

前を 行く 背中に

顔は 一つも ない

速さ だけを 分けあって

名前は 分けあわない

並んで いることが

話しかける かわりに なる

同じ 速さで 歩いている

誰も 私を 見ていない

見られて いないことが

少し 楽だ

同じ 速さで 歩いている

追い越した ことも ない

追い越さない ということを

誰も 決めていない

床の 光が 伸びる

伸びたぶんだけ 遠くなる

氷の 上の

白い 息に 似ていると まだ

気づいていない

気づかなくても 足は 進む

四つ目の 柱

すれ違う 間隔も 同じ

合わせた 覚えが ない

外れた 覚えも ない

どちらも 無いまま

足音が 揃っている

同じ 速さで 歩いている

誰も 私を 見ていない

見られて いないことが

少し 楽だ

同じ 速さで 歩いている

追い越した ことも ない

追い越さない ということが

私の 歩幅に なる

一歩だけ 音が ずれる

誰かの 靴が 遅れて

すぐに 戻る

誰も 振り向かない

同じ 速さで 歩いている

誰も 私を 見ていない

見られて いないことが

少し 楽だ

歩いて いる

次の 角

同じ速さで — 本編
同じ速さで — Reprise

第一幕同じ速さで

第二幕 Room 04 — 06
Room 04

五十ヘルツ

Fifty Hertz · 오십 헤르츠 · 五十赫兹

天井の 光が 震えている

数えられない 速さで

目を 閉じても

まぶたの 裏で 続いている

画面の 白が 揺れて

揺れていない ふりを する

となりの 席の 指も

同じ 間合いで 止まる

気づいた ことに

気づかない ふりを する

ふりを する ことが

仕事の ように 上手く なる

五十ヘルツの 光が

空の ほうへ ほどけていく

緑の 帯が ひとすじ

天井を 越えていく

五十ヘルツの 光が

わたしの 上で 揺れている

揺れて いる ということを

まだ 誰にも 言わない

蛍光灯の 端が

少しだけ 緑に 染まる

北の 夜の

カーテンに 似ていると もう

気づいている

気づいても キーは 鳴る

窓の ない 部屋で

光だけが 遠くを 知っている

見ない ことに した

見えて しまう ことも ある

どちらも 本当のまま

天井の 光が 震えている

五十ヘルツの 光が

空の ほうへ ほどけていく

緑の 帯が ひとすじ

天井を 越えていく

五十ヘルツの 光が

わたしの 上で 揺れている

揺れて いる ということが

わたしの 空に なる

一度だけ 光が 止まる

音の ない 白の なかで

誰かが 息を 止める

すぐに また 震えだす

五十ヘルツの 光が

空の ほうへ ほどけていく

緑の 帯が ひとすじ

天井を 越えていく

越えて いく

次の 明滅

五十ヘルツ — 本編
五十ヘルツ — Reprise

第二幕五十ヘルツ

Room 05

白いほう

The White Side · 하얀 쪽 · 白色的那一面

まだ 何も 書かれていない

ほうを 指が 選んでいる

刷り上がった 紙の

温かさが 手に 残る

一枚 ごとに 白が

少しずつ 深くなる

覚えている みたいに

音を 吸いこんでいく

書かれた ほうより

書かれない ほうへ

理由を 聞かれたら

たぶん 答えられない

白い ほうを 選んでいる

足跡の ない 野原の ように

何も 書かれて いないから

まだ 冷たい

白い ほうを 選んでいる

誰の 名前も ない

ない ということが

いちばん 静かだ

トレイの 上の 束が

雪の 深さに なっていく

踏めば 沈む

音が する 気がして まだ

指を 置けない

置かなくても 紙は 出る

同じ 向き 同じ 厚さ

積もる 速さも 同じ

選んだ わけでも ない

選ばない わけでも ない

どちらも 白いまま

指が 白い ほうへ 向かう

白い ほうを 選んでいる

足跡の ない 野原の ように

何も 書かれて いないから

まだ 冷たい

白い ほうを 選んでいる

誰の 名前も ない

ない ということが

わたしの 呼吸に なる

一枚だけ 裏返しで 出る

白い ほうが 下に なる

誰も 拾わない

雪は まだ 降っている

白い ほうを 選んでいる

足跡の ない 野原の ように

何も 書かれて いないから

まだ 冷たい

まだ 白い

次の 一枚

白いほう — 本編
白いほう — Reprise

第二幕白いほう

Room 06

階の数字

Floor Numbers · 층의 숫자 · 楼层的数字

扉の 上の 数字が

ひとつずつ 灯っていく

上がって いるのか

積もって いるのか わからない

鏡の 壁に 立つ

同じ 顔が 少しずつ

遅れて ついてくる

押していない 階で 止まる

階の 数が 増えるたび

ひとつ 年を 重ねる みたいに

輪の 外側に

わたしが 足されていく

階の 数字が 増えていく

木の 年輪の ように

上がって いるのではなく

積もっていく

階の 数字が 増えていく

降りる 階を 知っている

知っている ということを

数えたことは ない

ボタンの ふちが

すこし 木の 肌に 似てくる

冬の 森の

切り株に 似ていると もう

気づいている

気づいても 箱は 昇る

十二の つぎは 十三

開く 速さも 同じ

上がった 覚えが ない

降りた 覚えも ない

どちらも 輪のまま

数字が ひとつ 灯る

階の 数字が 増えていく

木の 年輪の ように

上がって いるのではなく

積もっていく

階の 数字が 増えていく

降りる 階を 知っている

数えない ということが

わたしの 輪に なる

一度だけ 数字が 飛ぶ

ひとつ ぶんの 年が

どこにも ない

誰も 気づかない

階の 数字が 増えていく

木の 年輪の ように

上がって いるのではなく

積もっていく

積もって いく

次の 階

階の数字 — 本編
階の数字 — Reprise

第二幕階の数字

第三幕 Room 07 — 08
Room 07

どちらでもよかった

Either Would Have Done · 어느 쪽이든 괜찮았어 · 哪边都可以

窓の 外が 流れている

流れているのは どちらだろう

座っている 膝の 上に

同じ 景色が 重なる

ビルの 切れ目が

深い 谷に なっていく

水の 色を した

影が ずっと 横にいる

どちらが 本当でも

かまわないと 思えてきた

思えて きたことに

もう 驚かない

どちらでも よかった

街でも 海でも

窓の むこうで 崖が

ほどけていく

どちらでも よかった

降りる 駅は 変わらない

変わらない ということを

責める ひとは いない

車輪の 音が

波の 間合いに 近づく

北の 入り江の

断面に 似ていると もう

知っている

知っていても 電車は 進む

トンネルを 抜けるたび

深さが 少し 増える

取り戻す 気も ない

手放す 気も ない

どちらも 窓のまま

景色が 重なっていく

どちらでも よかった

街でも 海でも

窓の むこうで 崖が

ほどけていく

どちらでも よかった

降りる 駅は 変わらない

責めない ということが

わたしの 窓に なる

一瞬だけ 外が 止まる

崖も ビルも 動かない

すぐに また 流れる

誰も 顔を あげない

どちらでも よかった

街でも 海でも

窓の むこうで 崖が

ほどけていく

ほどけて いく

次の 駅

どちらでもよかった — 本編
どちらでもよかった — Reprise

第三幕どちらでもよかった

Room 08

取りに行かない

I Won't Go Back for It · 가지러 가지 않아 · 不去取回

置いてきた ものが

そこに ある ことは 知っている

脱いだ 殻の かたちで

まだ 少し 温かい

手を のばせば 届く

届く ことも 知っている

知っていて 指は

膝の 上で 眠っている

取りに 行かない ことを

決めた わけでは ない

ただ 足が

そちらを 向かない

取りに 行かない

殻は 殻の まま

置いてきた 場所で

光っている

取りに 行かない

なくした わけでも ない

なくさない ということを

もう 数えていない

棚の 奥の 箱に

薄い 皮が 重なる

春の 枝に

残る 殻に 似ていると もう

わかっている

わかっていても 朝は 来る

ひとつ ぶんの 重さが

軽く なった だけ

惜しむ 気も ない

忘れる 気も ない

どちらも 殻のまま

足が そちらを 向かない

取りに 行かない

殻は 殻の まま

置いてきた 場所で

光っている

取りに 行かない

なくした わけでも ない

数えない ということが

わたしの かるさに なる

一度だけ 手が 伸びかける

指先が 宙を 押して

そのまま 止まる

誰も 見ていない

取りに 行かない

殻は 殻の まま

置いてきた 場所で

光っている

光って いる

次の 朝

取りに行かない — 本編
取りに行かない — Reprise

第三幕取りに行かない

第四幕 Room 09 — 10
Room 09

選んだことにする

I'll Call It My Choice · 선택한 걸로 할게 · 就当是我选的

色の ぬけた 写真が

まだ 少しずつ 薄くなる

止まったと 思っていた

時間の ほうが 動いている

写っている 顔が

わたしか どうか もう

確かめる ことも

しなくなった

選んだ 覚えは ない

それでも ここに いる

いる ことを

選んだ ことに する

選んだ ことに する

誰かに 言われる まえに

わたしが わたしに

そう 言う

選んだ ことに する

諦めたのでは ない

諦めない ということを

選んだ ことに する

写真の ふちが

冬の 光に 溶けていく

北の 空の

淡い 青に 似ていると もう

わかっている

わかっていて 目を そらさない

褪せていく 速さも

わたしの 速さ

戻りたい わけでも ない

進みたい わけでも ない

どちらも 選んだまま

写真が まだ 薄くなる

選んだ ことに する

誰かに 言われる まえに

わたしが わたしに

そう 言う

選んだ ことに する

諦めたのでは ない

選ぶ ということが

わたしの 声に なる

一度だけ 声が 先に 出る

言葉より 少し 早く

誰も 驚かない

わたしだけが 聞いている

選んだ ことに する

誰かに 言われる まえに

わたしが わたしに

そう 言う

ことに する

同じ 朝へ

選んだことにする — 本編
選んだことにする — Reprise

第四幕選んだことにする

Room 10

また定刻

On Time Again · 다시 정시 · 又是准点

足が 先に 降りている

今日も 改札の 音より 前に

体が 覚えた ぶんだけ

朝が 少し 長くなる

同じ 位置に 立っている

線の 内側の 少し 手前

足跡は もう

濃く なっていない

アナウンスが 二回 鳴って

一回目も 聞いている

聞かなくても わかる

わかる ことを 選んでいる

定刻に なっている

わたしが 決めて ここに いる

定刻の ほうへ

歩いていく

定刻に なっている

遅れたことが ない

遅れない ということを

わたしが 選んでいる

白い 息が 前に 出る

出たぶんだけ 消える

雪の 踏み跡に

似ていると もう 知っている

知っていても 電車は 来る

七両目の 同じ 扉

並ぶ 順番も 同じ

同じ ことを 選ぶ

選んだ 記憶が ある

選ばなかった 記憶も ある

どちらも 持ったまま

足が 先に 降りている

定刻に なっている

わたしが 決めて ここに いる

定刻の ほうへ

歩いていく

定刻に なっている

遅れたことが ない

遅れない ということが

わたしの 朝に なる

一度だけ あの 音が 鳴る

はじめての 朝と 同じ

わたしは 振り向かない

知っている から

定刻に なっている

わたしが 決めて ここに いる

定刻の ほうへ

歩いていく

歩いて いく

次の 定刻

また定刻 — 本編
また定刻 — Reprise

第四幕また定刻